秋の日向薬師

日向(ひなた)薬師は神奈川県伊勢原市日向に所在、伊勢原市北部を東流する
日向川の左岸に南面する尾根の中腹にある。 正式には宝城坊と呼称され、
高野山真言宗、本尊は薬師三尊像。 もと日向山霊山(りょうせん)寺。 古来、
日向薬師と称され、薬師信仰の対象として有名である。 開基は行基と伝えられる。

本尊は平安時代(10世紀中頃)の作、鉈彫一木造薬師瑠璃光如来像と脇侍像の
日光菩薩・月光菩薩で、国指定重要文化財である。 本尊は厨子に収蔵されており、
正月三ヶ日、初薬師の1月8日、大法会の行われる4月15日の年5日ご開帳。

本尊のほかに、鎌倉前期の作とされる阿弥陀如来坐像、薬師如来坐像、日光月光
菩薩立像、四天王立像、鎌倉末から南北朝期作と推定される十二神将立像が、
本尊厨子とともに宝物殿に安置されている。いずれの像も国指定重要文化財で、
県下随一の仏像の宝庫といえる。

木造薬師如来坐像は像高2メートル35センチの丈六仏。 面相は重厚で、締まった頬や
彫出された目、太い鼻筋に力強さが見られる。 堂々とした体躯はバランスも
よく整い、ボリューム感に富んでいる。 全体におとなしい印象を与える。

木造阿弥陀如来像も像高2メートル73センチの丈六仏。 肩幅や膝張が広く、
体躯はがっしりとしている。 しかし、面相はさほど強くはなく、平板な感じを受ける。 
表情はおだやかな感じ。

木造日光菩薩立像は像高2メートル83センチ、木造月光菩薩立像は像高2メートル
71センチ、いずれもヒノキ材の寄木造。 木造四天王立像もヒノキ材の寄木造で、
像高が約2メートル。 木造十二神将立像の像高は1メートル60センチから
1メートル75センチといずれの像も大きく、よく保存されて大変素晴らしい仏像である。

因みに本堂近くの鐘堂にある梵鐘は物部光連の鋳造によるとされ、
これも国指定重要文化財である。

鬱蒼とした森の中を登る 山門
本堂 鐘堂
梵鐘

阿弥陀如来坐像

薬師如来坐像

宝城坊宝物殿内では撮影禁止である。
この3葉の写真は参考文献より転写したもの。
薬師如来坐像の頭部

秋の景色