早春の北鎌倉を訪ねる。今回は主に東慶寺の聖観音立像と水月観音坐像を拝観する小旅行である。水月観音の拝観には事前に予約が必要のようだ。そのあと円覚寺と建長寺を訪れる。
円覚寺向い側の丘陵にある東慶寺を訪れると、紅梅白梅が咲きほころび、黄色の万作の花も彩りを添えている。臨済宗円覚寺派で、正式には松岡山東慶総持禅寺という。「縁切寺」「「駆込寺」として有名である。山門は藁葺屋根の素朴な佇まい。左手に鐘楼がある。
木造聖観音立像のほか、初音蒔絵火取母、葡萄蒔絵螺鈿聖餅箱が国重要文化財に指定されている。さらに有名で、人気のあるのが木造水月観音坐像で、銅鐘とともに県文化財に指定されている。
水月観音は水月堂に安置されている。水中の月影を観じる優美な姿から、水月観音と名付けられたとされ、この優美な姿は禅僧によって画題としてしばしば取り上げられてきた。しかし彫刻の作例は余り見られず、この東慶寺に伝わる観音半跏像は非常に珍しい。ゆったりと白衣を身に纏い、蓮華を持った右手を岩に預け、足を投げ出して横様に座る姿は、絵画的な趣致に富む。心なしか愁いに沈んでいるかに見える可憐な顔、装飾の豊かな白衣の衣文など、その姿には艶かしささえ感じられ、人間的な趣がある。
撮影は禁止されているので、聖観音立像と水月観音坐像の写真は、参考文献から転写させていただいた。